脳を鍛えるには運動しかない! 最新科学でわかった脳細胞の増やし方 に対する否定的考察

脳を鍛えるには運動しかないという

有名な本を読んでいたところ

非常に引っ掛ける部分があったため記事にする。

 

 

 

第一章

「ネーパーヴィルの奇跡」

これは米国イリノイ州にあるネーパーヴィルという高校において

0時限目に「運動」を行った結果、TIMSSの理科・数学のテストで

理科が世界1位。数学が世界6位という輝かしい成績を収めたという内容。

この特別クラスに参加していた生徒は、参加していない生徒の成績の伸び率が10.7%

であったことに対して17%も向上したという。

 

これに対して私の考え。

1つ目はTIMSSでハイスコアを取得できたということについて。

元々ネーパーヴィルは非常にレベルが高い高校であったため、

単純に運動の結果、TIMSSでハイスコアを得たとは考えにくい。

またこのデータだけでは、運動と成績に相関があったのかも不明である。

運動を始める前後でのTIMSSのスコアが示されていないのである。

 

2つ目は特別クラスに参加していた生徒と参加していない生徒の成績について。

こちらも運動が成績に影響したとは考えにくい。

このような0時限クラスに参加するような生徒は、参加しない生徒に比べて

向上心が高いことが予測される。向上心の高い生徒のほうが努力し、

成績が伸びるのは至極当然である。

 

CDEの研究

100万人以上の生徒の標準的な学力検査の点数と

フィットネスグラム(身体能力の評価)の得点が相関することがわかった。

 

また健康な生徒のほうがそうでない生徒より成績が良かったことが

2002年の研究でわかったという。

 

これについて私の意見だが、実際に身体能力とIQが相関するという研究もあるため、

身体能力と成績に相関があるのははぼ正しいと言える。

ただし、このことと身体能力を鍛えれば成績が上がることは全く別問題であることに

留意してほしい。

 

第一章はネーパーヴィルの奇跡が正しいという前提のもとで話が進んでいるため

第一章からでは運動すれば頭がよくなるという解答は全く導けなかった。

 

第二章

BDNF

BDNFは脳のシナプス受容体に結びつき、イオンを放出し、受容体部位の電位を上げ信号を強くする。細胞内では遺伝子を活性化させ、BDNFやセロトニンシナプスの材料となるタンパク質をより作る指示を出す。

そしてBDNFは運動によって増やすことができる。

 

という主旨の記述がある。

 

まず、BDNFの仮定だが、この本が2009年に出版されているにも関わらず、

2020年現在でもこの仮設は概ね正しいという見方である。

BDNFは本書の通りニューロンの維持、成長、分化を促す。

 

ただし注意すべきが運動によってBDNFが増加するという記述である。

 

以下の引用のように、日本人を対象とした実験ではBDNFの増加が生じなかった

という研究がある。ただし、サンプル数が40であるため

あまり参考にはならない。運動とBDNFの相関はほぼあると考えられているが、

このように人種的な差異があることは否定できない。

CiNii 論文 -  日本人における中強度有酸素運動による脳由来神経栄養因子の反応に関する研究